あしたの宝物〜渡辺亮パーカッション・連続ワークショップの恵み

2011.1.3

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いわき市の各地で3年間にわたって実施されたおでかけアリオス「渡辺亮パーカッション・連続ワークショップ」を振り返る企画の3回目。今回は、地元紙「いわき民報」の記者、柿沼美佳さん。この夏、好間(よしま)、四倉(よつくら)の2地区のワークショップを取材し、感じたことをまとめていただきました。(編集部)

文:柿沼美佳(いわき民報記者)
写真:鈴木穣蔵

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9月20日、道の駅よつくら港でのミニ発表会。取材しながら、その様子を見守っていた私の目には、涙が浮かんだ。当事者でもない私が、だ。午前中は降雨で、開催が危ぶまれたものの、始まる頃には晴れ間が広がり、太陽の光が出演者を照らした。最高の舞台での演奏に、子どもたちは緊張した顔とともに、キラキラ輝く笑顔を見せてくれた。3日間の成果を一生懸命に披露する子どもたちの表情には、曇りのかけらも見つかるわけがない。

途中、1人の女の子が演奏中、誰かを探しているそぶりを見せた。6歳の彼女は昨年の大集合ライブで、心から楽しんでいる表情に、私が胸を打たれた子だった。彼女は私の顔を見つけると、にっこりと笑い、「見てくれている?」とばかりに、目で合図を送ってきた。どうやら、私を探したらしい。私は声に出さず、「がんばれ!」と大きく口を開けてエールを送ると、彼女はうなずき、視線を亮さんに戻した。

直接確かめたわけではないが、自分が楽しみ、頑張っている姿を、知っている大人に見せたかったのではないか。演奏する姿は誰かに誇れるものに思えたのだろう、と想像する。3日間を通し、誰かに自慢したいことが宿った、そう考えると、たまらなく嬉しくなった。

彼女をはじめ、はじけるような、充実した、達成感を得たような笑顔。息がぴったりと合い、エネルギーに満ち、聴く人のイマジネーションを刺激するシンフォニー。それらは、胸をいっぱいにするに十分だった。素敵な時間をありがとう、素直に心からそう思えた発表会。感激、感動したからこその涙だった。実は、これを書きながらも、思い出してはウルっとしていたりもする。

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ここに至るまでの作業は、時間にすれば10時間も満たない。短い時間の中で、亮さんは子どもたちをまとめ、壮大なシンフォニーを作る。好間編でも四倉編でも、初日に亮さんのパフォーマンスを見た子どもたちは、目の色が変わって俄然本気になり、憧憬の眼差しに変わる。その手から繰り出す音は、目の前に森や海、山といった、表現する情景を、色彩豊かに浮かばせてくれる。まさに生きた音が、子どもたちの身体を駆け抜け、心を一瞬で奪っていくようだった。子どもたちの集中力、緊張感につながり、自然と連帯感を生み出しているように見えた。

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2、3楽章の楽器選びでも、諍いもなくスムーズ。ジャンボ・カホン作りでも、特に絵柄を指示したわけでもなく、お互いに相談するでもなく、衝突することもなく、それぞれがもくもくと絵筆を走らせるが、描かれた絵には、1つのストーリーが生まれている。音が人を、心を結び付けている。私は言葉を仕事にするが、人の心を動かすのは言葉だけではない、1つ1つの出来事は、改めてそれを強く意識させた。

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すべてを終えた後、子どもたちに亮さんをどう思うか尋ねた。「とにかくね、すごい人」。子どもらしい、飾らない、素直な感想だ。今日の大集合ライブの子どもたちの顔を見て、音を聞くことで、それを導き出した亮さんの凄さが、子どもたちの気持ちが分かるはずだ。そして、どのような3日間だったかも、うかがい知ることができるだろう。

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今、子どもたちが言葉にできるのは、みんなで演奏したこと、いろんな楽器に触れたことが楽しかった、ということで、一緒に得た宝物には、まだ気づかないかもしれない。「参加した」「一緒に頑張った」「やり遂げた」「仲間ができた」……3日間で、子どもたちはたくさんの宝物を心に宿した。それに気づくのは、悩んだときや迷ったとき。宝物が元気や勇気、力に変わってくれるはず。この夏の経験が、いつまでも子どもたちの心の中に生き続け、心を照らしてくれるだろう。

※2010年10月31日「渡辺亮パーカッション・連続ワークショップ 大集合ライブ」公演プログラムに寄せられた文章を再掲載しました。

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