【事業レポート】武久源造 チェンバロ 公開マスタークラス

2015.6.30

【事業データ】
事業名:武久源造 チェンバロ 公開マスタークラス
日時:2015年5月20日(水)10:45〜16:00(途中昼休憩)
会場:いわきアリオス 本館5階 大リハーサル室
出演:武久源造(たけひさ げんぞう)(チェンバロ奏者)
受講生:木田麻貴、鈴木香保里、津山博子、溝井麻佐美(ピアニスト)
文・撮影:足立優司(企画制作課 制作第一グループ チーフ)

5月19日(火)の「武久源造 チェンバロ on カスケード」に続き、5月20日(水)は、会場を大リハーサル室にうつし、「武久源造 チェンバロ公開マスタークラス」が行われました。

まずは武久さんによる公開レクチャーが10:45に開講。
当初予定では、レクチャーは11:00~12:20という80分間のはずでしたが、武久さんが準備してくださっているうちに、お話していただく内容が膨らみ、結局15分前倒しの上、終了も30分以上延ばして2時間みっちりのレクチャーになりました。
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18世紀のヨーロッパ社会情勢の解説から始まり、チェンバロとフォルテピアノの関係と勢力図、大バッハ一家の様子、バッハの音楽の解釈論と演奏法など多岐にわたるもので、実際の演奏も交えた濃密な内容。
特に、チェンバロがどのようにしてフォルテとピアノを演奏するかを実演で示した、ロワイエ作曲の「スキタイ人の行進」では、いわき市出身のチェンバロ奏者・山川節子さんが手動でチェンバロの蓋の開き方を調節しながらのクレッシェンドやディミヌエンドも、実際に聴くことができました。
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結局、こうまでしてフォルテからピアノまでのダイナミックス変化を音楽的に求めるのなら、やっぱり鍵盤を弾くタッチだけでそれができるピアノの方が優れているよね、ということになり、この奏法はチェンバロ自身の首を絞める形で、チェンバロとピアノの主役交代が加速することになったのでした。

昼休憩を挟んだ午後は、四人のモデル受講生に対する、一人30分ずつの公開レッスン。

■鈴木香保里さん
モーツァルト/メヌエットK.5
バッハ/インヴェンション第3番BWV.774、第11番BWV.782

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手首のポジション、力のかけ方といった、楽器をより上手く鳴らすための鍵盤タッチの方法から、バッハやモーツァルトがその作品を書いた意図、そして作品の持つ他にはない特徴をいかに表現するかまで、お手本演奏と共にじっくりレッスンが行われました。
モーツァルトのメヌエットは、バッハと同世代の名フルート奏者、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツの証言からもメヌエットという形式の速度が時代とともに速くなり、ハイドンやモーツァルトの時代には、まるで日に日に速くなっていったことが伝えられてています。ベートーヴェンの時代にはもはや、踊るためのメヌエットという概念はなくなってしまった、ということが分かっていることが示され、また幼い日のモーツァルトが手遊びで鍵盤を弾く際にも、指がいかに早く回るかを面白がっていたことから、K.5のメヌエットも自ずと、速く弾くことが、これを作曲した当時のモーツァルトの意図に添うことである、と仰っていました。

インヴェンションは、「鍵盤楽器の演奏法のためのお手本」としてのみならず、順次進行する一つの主題をもとに、いかに曲を組み立てていくのか、という「作曲のお手本」としてバッハは書いたのであり、そうした意図を汲み取りつつ、しかも過度に匂わせないように演奏することが大切である、と武久さんは述べられました。

■溝井麻佐美さん
 バッハ/フーガの技法BWV.1080より コントラプンクトゥス1

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フーガの技法は、跳躍する動機(テーマ)と順次進行(隣り合った音に進行すること)する動機が4つの声部に常に絡まりあいながら同時多発的に存在するように書かれています。このため、この2つの動機の性格をはっきりと弾き分けながら、常にどの声部がどちらの動機を演奏しているのか、ソプラノ・アルト・テノール・ベース全ての声部について検証してから組み上げる、という作業が重要であることを指摘されました。

■津山博子さん
 バッハ/フランス組曲第5番ト長調 BWV.816より アルマンド、クーラント

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フランス組曲では、「あなたはこの曲について、どこがどのように素敵だと思うか」という質問を受講生に投げかけ、曲を演奏するのに、もちろん楽譜をその通りに弾く、というだけでは全く足りない上に、曲の持つ、バッハらしさ、その曲だけの持つ独自の魅力を、きちんと意識して表現することが、バロック音楽を21世紀の今日に演奏する意義にもつながる、ということを話されました。

■木田麻貴さん
 バッハ/フランス組曲第5番 ト長調 BWV.816 より サラバンド

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受講生にジルバーマン・ピアノも演奏させて(受講生は皆さん、地元いわきのピアノ演奏家・教師です)、その上で同じ表現を何とかチェンバロでも行ってみる、というレッスンもあり、非常に濃密な内容のレッスンとなりました。

そしてレッスンの最後に武久さんは、聴講の方々へのサービスとして、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」よりアリアを演奏。

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実は昨年8月、武久さんは、アリオスの別館音楽小ホールで、アリオスの16フィート弦付きジャーマン・チェンバロ(写真中、緑色に赤の唐草模様の楽器)を用いて、バッハの「ゴールトベルク変奏曲」をレコーディングされました。使用した楽器は、ジャーマン・チェンバロに加え、マティアス・クラマー氏の作による1段鍵盤ジャーマン・チェンバロと、ベルギーの製作者エテンヌ・ドゥベシュ氏の手によるポジティフ・オルガンを加えた3台。そのときの音源を収録したCDが、今年、2015年の年末に発売されることが決定しました! ボーナストラックとして、1974年にストラスブールで発見された「ゴールトベルク変奏曲」の初版譜面の巻末ページに、バッハ自身が手書きで丁寧に書き込んだ「14のカノン」もボーナス・トラックとして収録されていますので、こちらも合わせてお楽しみに。

それに合わせて、2016年1月13日(水) 19:00よりアリオス音楽小ホールにて、「武久源造 『J.S.バッハ/ゴールドベルク変奏曲』の夕べ」を開催します。チケットは10/3(土)予約開始となります♪ どうぞご期待ください!
公演詳細WEBページはこちらです。

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