【速報レポート】本市ジャーナリスト・柿沼美佳さんが観た「第92回 N響オーチャード定期演奏会」

2017.2.5


 日本のクラシック界をリードし続ける、NHK交響楽団による、東北唯一の「定期演奏会」は、今年度で6回目となります。今回は一部の楽曲で、いわき市立高坂小学校・平第三小学校の合唱部児童が、世界的な指揮者ウラディミール・フェドセーエフさんとN響、東京混声合唱団の皆さんと共演。2017.2/5(日)に行う「第6回 NHK交響楽団 いわき定期演奏会」、そして前日2/4(土)には、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールでの「第92回 N響オーチャード定期演奏会」にも出演し、元気な歌声を多くの皆様に届けました。
 この度
、平第三小学校の卒業生でもあり、福島県を拠点にフリージャーナリストとして活動されている柿沼美佳さんが、子どもたちに同行し、コンサートを鑑賞、取材した中で感じられたことを、レポートしていただきました。(編集部)

文:柿沼美佳(フリージャーナリスト)
写真:三浦興ー(*を除く)
写真提供:Bunkamuraオーチャードホール(*を除く)

■第92回 N響オーチャード定期演奏会
〔日時〕2017年2月4日(土)15:30開演
〔会場〕Bunkamuraオーチャードホール
〔出演〕ウラディーミル・フェドセーエフ(指揮) NHK交響楽団(管弦楽)
    東京混声合唱団*(男声合唱) いわき市立高坂小学校・いわき市立平第三小学校合唱部*(児童合唱)
〔曲目〕ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編)/交響詩〈はげ山の一夜〉
    ハチャトゥリアン/組曲〈仮面舞踏会〉
    チャイコフスキー/幻想序曲〈ロミオとジュリエット〉
    チャイコフスキー/大序曲〈1812年〉作品49*


いわき市立高坂小学校・平第三小学校が出演した「第92回 N響オーチャード定期演奏会」を観て

アンコール、カーテンコールが終わり、マエストロ、オーケストラが退場すると、
聴衆も帰り道を急ぐのが、演奏会の常だが、今日は違っていた。
席を立ち、ホールを出ようとしていた聴衆が足を止め、再び大きな拍手を送った。その先にいたのは、いわきの子どもたち。
大役を終え、ステージを降りて舞台袖へと向かい始めた子どもたちに、
聴衆は笑顔で、文字通りのあたたかな拍手をもって、その労をねぎらっていた。
その姿に、私はまた思わず、涙をぬぐった。

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言わずもがな、日本を代表するオーケストラであるNHK交響楽団。
そのステージに、いわきの小学生が立つことを聞いたのはいつだっただろう。
高坂小学校、平第三小学校の子どもたちが歌声で共演するという話に、そのときも私は、目頭を熱くした。
先輩面できるような大した人間ではないが、平三小の卒業生の1人としても、
1人のいわき市民として、1人の音楽ファンとして、心震える思いになり、
子どもたちがステージに立つ姿を瞼に思い浮かべると、自然と涙も浮かぶのだった。

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東京に向けていわきを出発したのは、午前6時。
バスの中の子どもたちは、元気そのもので、緊張を微塵も感じさせなかった。
約4時間後、会場のBunkamuraオーチャードホールで練習を始めると、その顔に笑顔はなかった。
いよいよ迫った本番に、さすがのいわきの子どもたちも、多少の恐れを抱いたのだろうか。

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その空気を変えたのが、他の誰でもなく、フェセドーエフ氏だった。
白と黒とグレーのラガーシャツに身を包み、決して大柄ではないものの、その存在感は抜群。
だが、威圧感はまったくない。
あたたかな笑顔で歩み寄った巨匠を目にした子どもたちは、驚きの声を上げるも、破顔一笑した。
「ズドラートヴィチェ!」
ロシア語であいさつする子どもたちに、さらに表情を緩めたマエストロ。
両者は一瞬で、結び付きを深めた。
お元気でいらっしゃるがマエストロは御年85歳。
対する子どもたちは、10〜12歳という年齢差や様々な垣根を超え、
音楽を愛する者同士、たった一言で通じるものがあるんだろうと、素直に思えた瞬間だった。

全身を使って自分たちに向けて指揮するマエストロに、
子どもたちの強ばった顔も心も、みるみるうちに解されていった。
これまでの練習のすべてを出すように、心を込めて体から放たれた歌に、
氏は日本語で「ありがとう」と応え、本番での健闘を語りかけた。
この後、オーケストラ、共演する東京混声合唱団のメンバーとともにゲネプロにも臨み、気分を高めていった。
ある児童は、「楽しみの気持ちのほうが大きい。早くステージで歌いたい」と目を輝かせていた。

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午後2時半の開場後、ロビーコンサートが行われた。
出演したのは、1月23日(月)にいわきアリオスで演奏会を開いた、N響メンバーの木管三重奏トリオ・サンクァンシュ。
メンバーの3人は、これまでにも度々いわきを訪れ、おでかけアリオスでの学校演奏も経験している。
それを振り返ったファゴットの菅原恵子さんは、思いを込めながら聴衆に語りかけてくれた。
「いわきの子どもたちが、お礼にと歌ってくれた歌声に、涙が出る思いだった。
とても優しい歌声なので、皆さん、楽しみにしてください。天使の歌声です」
本番で演奏されたのは4曲。
子どもたちは、プログラム最後の4曲目チャイコフスキー作曲 大序曲「1812年」で登場した。
入場する児童たちの姿に、聴衆から自然に拍手が沸き起こった。
ホール内の空気が、どことなく優しい感じがしたのは、気のせいだったのだろうか。

約15分の曲中、子どもたちが歌うのは、わずかな時間だ。
それでも、存在感は抜群だった。
堂々とした佇まいが放つ、澄んだ伸びやかな歌声は胸に飛び込み、響いてきた。
約2,100人の満員の聴衆1人ひとりに、きっと真っ直ぐに届いたはず。

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またもや視界が涙で滲んだ。
菅原さん(前述した、N響ファゴット奏者、トリオ・サンクァンシュ メンバー)が言うように、天使の歌声そのものだった。
「1812年」を聞いて1度も涙したことはなかったが、こんなに泣かされるとは思いも寄らなかった。
この曲は、ナポレオンのロシア侵攻への勝利から70周年を祝って作られた、ロシアの荘重な大管弦楽曲。
カタルシスの極みを感じることのできる一曲だと思っているが、
フェドセーエフ氏の、まさに老練たる導きで紡ぎ出された音は、それを実感するものだった。
祈り、戦い、敗北、勝利の秀逸な音の描写の中、
子どもたちの歌声は、あまりにも美しく、純真だった。
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カーテンコールで東京混声合唱団の指揮の伊藤翔さんとともに、高坂小学校の鈴木先生と平第三小学校の†野先生が舞台上に登場

圧巻の演奏に、演奏が終わると同時に沸き起こった大きな拍手。
子どもたちに向けた拍手を送る人たちの顔は、みんな笑顔だった。
私のすぐ近くに座っていた、日本を代表する、さる男性バレエダンサーも「素晴らしい」と呟き、
子どもたちに一際大きな拍手を送っていたのも印象的だった。

終演後、偶然に話を聞いた聴衆の1人が、幼少期をいわき市内郷で過ごした女性だった。
合唱に親しみ、外国語での合唱にも取り組んでいるという老齢の女性は、
「とっても素晴らしかった。ロシア語の発音も素晴らしい。感動した」と感激していた。
ロシア語の先生からも、きちんと発音を学んだ成果まで、聴衆にはきちんと伝わっていた。

1週間前、「平三小、高坂小の子どもがすごいぞってことを、歌で示してきたい」と意気込みを語ってくれていた、ある児童。
それを聞いた別な児童は、「いわきプライドだね」と言葉を重ねた。
43人の子どもたちは、いわきの子どもたちの力を、言葉通りにこれでもかと示してくれた。
演奏を終えた児童の1人は、「自分たちの演奏で、これだけの拍手をもらえるかと思って、とても嬉しかった」と声を弾ませた。

あの歌声、堂々たる姿を思い出すと、まだ熱いものが込み上げる。
こんなに感動させられるとは、手垢が付いた言葉で恐縮だが、良い意味で裏切られた。
「1812年」は、カタルシスの極みを感じる一曲で、フェドセーエフ・N響のコンビはまさにそれを体現してくれた。
オーケストレーションの醍醐味を感じる一方で、胸に熱いものが込み上げる、とても美しいステージだった。
きっと、明日の演奏も素晴らしいパフォーマンスで楽しませてくれるはず。
これぞチャイコフスキーの音楽だ!と膝を打ち、子どもたちの歌声で、晴れやかな気分をぜひとも感じていただきたい。

高坂小のみんな、平三小のみんな、本当にありがとう。



様々な方に支えられて終了した東京公演を経て、2/5(日)はいわき定期演奏会!
曲目・出演は東京公演と同じです。ぜひお越しください。

■市制施行50周年記念事業 第6回 NHK交響楽団 いわき定期演奏会
〔日時〕2017年2月5日(日)15:00開演(14:15開場)
〔会場〕いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
〔料金〕全席指定/S席 8,000円 A席 7,000円 B席 6,000円 C席・車いす席 5,000円
    ※学生全席種半額 ※未就学児の入場はご遠慮いただいております
〔当日券について〕14:00〜大ホール入口前で販売いたします
〔ご予約・お問合せ〕アリオスチケットセンター 0246-22-5800

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