【アリオスこぼればなし】「おでかけアリオス 三和プロジェクト」上三坂公民館のPIANO STORY

2017.2.20

いわきアリオスでは、アートを通した子どもたちとの関わりや、学校だけでなく周辺の地域コミュニティとの関わりについて新たな可能性を模索すべく、今年4月からおでかけアリオス アソシエイトアーティストに就任したピアニスト・田村緑さんとともに、「おでかけアリオス三和プロジェクト」を、平成28年度〜30年度の3年間の継続プログラムとして実施することになりました。昨年10月25日(火)、その1回目の「おでかけアリオス」を、上三坂公民館で開催しましたが、今回はそのコンサートの“裏話”を皆さんにご紹介したいと思います。


撮影:田子和司(*のみ)
文:前田優子(いわきアリオス 企画制作課)

三和(みわ)地区の区長の皆さんに「三和で、田村緑さんのピアノコンサートを開催したい」とご相談したところ、快く受け入れてくださり、1回目のコンサートは三和町・上三坂で開催することになりました。
今回のコンサート会場になった上三坂公民館のピアノについて、区長さんから「ぜひこのピアノでコンサートを開きたい。なぜなら、かつてこの地区にあった上三坂小学校のグランドピアノで、地区の人たちがお金を出し合い子どもたちにプレゼントしたピアノなのです」というお話をいただいていました。
しかし、長期間演奏される機会がなかったのか、埃をかぶり、音が出ない鍵盤もたくさん。うーむ。このピアノでコンサート……果たして修繕可能な状態なのか、仮に音が出るようになったとして、1時間のコンサートに耐えうる力がこの楽器に残っているのだろうか。すぐに結論を出すことはできませんでした。


さっそく、いつもアリオスのピアノの調律をお願いしている、門井廣(ひろし)さんにご相談をし、状態を見ていただくことにしました。大屋根を開け、鍵盤を引き出して、ざっと状態を確認した後、門井さんは「大丈夫だと思いますよ、直せます」とおっしゃると、驚く私を尻目に、用意してお持ちになった道具を取り出し、さっそく作業に入りました。まずは、鍵盤。一番高いC音(ドの音)の鍵盤はハンマーが折れてなくなっていたのですが、別のピアノから取り出してきたハンマーをあてがってみると、なんとか音が出る状態に!


湿気などで動きが悪くなっていたそのほかの鍵盤も、潤滑スプレーをかけてみると全て動くようになりました。弾力を失い変形していたハンマーは、一つひとつヤスリで丸く削り、針でやわらかくほぐしていきます。


ピアノの内部や弦の隙間に入り込んだほこりは、ブラシで丁寧に取り除きます。


響板(ピアノの裏側にある、響きをよくする板)に印字されていたYAMAHA PIANOのマークが、埃の下からでてきました!


ここまでの作業で約2時間。ようやく調律です。数十年ぶりなので、調律してもなかなか音が安定しませんが、門井さんはそれも見越して、ゆっくりじっくり、作業を進めます。


ひととおり調律した後も、何度も鍵盤を引き出しては、ハンマーを削ったり、鍵盤の動きのバランスを見たり……汗まみれ、埃まみれになりながらも「だんだんピアノらしくなってきました」と、なんだか嬉しそうな門井さん。「ええ、こういう作業はとても楽しいです。手を加えると、どんどん蘇ってくるのがわかるから」と。田村緑さんはコンサートの中で門井さんを「匠」と呼んでおられましたが、まさに、長年のご経験に裏付けされた、見事な「匠の技」でした。



そしてコンサート当日。朝一番に会場入りした門井さんがあらためて調律したピアノを、田村さんが弾きこんでいきます。時間を経るにつれてどんどん音が変化していきます。「目を覚ましてきましたね」と笑顔で見守る門井さん。


かくして、上三坂公民館のグランドピアノは、リストやハチャトゥリアンを力強く朗々と、そして思い出深い旧上三坂小学校の校歌を、かつての子どもたちと一緒にやさしく歌いきることができました。
詳細画像*

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この夜が「幻の一夜」に終わりませんように。これから再び地区の皆さんに愛されるピアノになりますように。私たちも一緒に見守っていけたらと思っています。

■公演データ
〔日時〕2016年10月25日(火)19:00〜
〔会場〕上三坂公民館(いわき市三和町)
〔出演〕田村緑(ピアニスト/おでかけアリオス アソシエイト・アーティスト)
〔当日運営〕おでかけアリオス上三坂地区実行委員会
〔ピアノ調律・調整〕門井 廣(Kadoi調律工房)
〔プログラム〕
ムソルグスキー:『展覧会の絵』より「プロムナード」
松谷卓:TAKUMI〜匠
旧・上三坂小学校 校歌
ハチャトゥリアン:バレエ『ガイーヌ』より「剣の舞」
リスト:愛の夢
リスト:『伝説』より「波の上を渡るパオラの聖フランチェスコ」



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