【いわき演劇祭2016】観劇レポート(9/最終回)劇団いわき小劇場・劇団いわき青春座「平成版 ちゃぶ台の詩」

2017.3.31

演劇を通じて人と人が、地域と地域が、そして人と地域が繋がることを目指す、いわきアリオスの「リージョナル・シアター」。今年度は、いわき演劇の会と共に「いわき演劇祭2016」を開催しました。

今回の演劇祭は2016年8月27日(土)〜11月27日(日)の3ヵ月をかけて開催し、9団体による8公演と、2つの関連公演をお楽しみいただきました。11月26日(土)・27日(日)には、いわきアリオス中劇場にて、この演劇祭の大トリとして、劇団いわき小劇場と劇団いわき青春座の合同公演「平成版 ちゃぶ台の詩」を開催しました。

演劇祭に参加した各団体は、それぞれの稽古や活動がある中、お互いの公演に足を運び、観劇やお手伝いをして交流を深めてきました。この観劇レポートでは、演劇祭に参加している団体同士が、それぞれの公演についてレポートを書いています。公演を見逃してしまった方も、このレポートを通じて、演劇祭をお楽しみいただけると嬉しいです。

最終回となる今回の執筆者は、「ITPいわき演劇プロジェクト」の高木 達(とおる)さんと、「シア・トリエ」の大信ペリカンさんです

【事業データ】
リージョナル・シアター2016 いわき演劇祭2016
劇団いわき小劇場・劇団いわき青春座「平成版 ちゃぶ台の詩」
〔日時〕2016年11月26日(土)13:30開演、18:30開演
        27日(日)13:30開演
〔会場〕いわきアリオス 中劇場
〔撮影〕白土亮次




●劇団いわき小劇場・劇団いわき青春座「平成版 ちゃぶ台の詩」
高木 達(ITPいわき演劇プロジェクト)

劇団いわき小劇場と劇団いわき青春座のコラボ公演がいわき演劇祭のトリを飾った。歌手志望の高校生を巡る家庭劇である。一番印象に残ったのは祖母役だ。将来、介護で重荷になる老人が「家族の手を煩わしたくない」という思いが、屈折した表現で観客の笑いを誘った。他の家族、主人公の高校生や母と弟はその役が素直に伝わってきた。



だが、父親や主人公を取り巻く大人たち、とりわけ先生方の表現には違和感を覚えた。昔、有名なプロの演出家の助手を務めたことがある。彼は役作りができない俳優がいると、その俳優がしゃべる時には観客がその役をイメージできる音楽を入れていた。音楽によって、観客はその役がどのような存在だかわかるのだ。今回も、父に対してはそのような手法がとられていた。



また、観客の意識をつなぎとめるため、笑いを誘う言葉が多く使われた。特に、主人公の将来を気遣う先生などの教育者やPTA役員にだ。だが、観客を笑わせるためのセリフは役の存在を希薄にする。いや、それどころか役が分裂してしまう恐れがある。俳優諸氏がこれを乗り越えるのは相当苦労をしたに違いない。とにかく、父親役や先生役の諸氏は役を創造するのに長けた俳優だと思っている。彼らがこのような扱いを受けるのは悲しい。
ただ、教育現場を知っている作者(※)でなければ描けない、楽しい高校生の家族だった。
(※編集注:本作の作・演出である石原哲也さんは、元・高校教員であり、いわきの高校演劇の発展に尽力されてきた方です)



●見せたいわきの底力
大信ペリカン(シア・トリエ)

会場であるアリオスの中劇場に入ると中はお客様でいっぱい。年齢も幅広いその客席を見ながら、劇団いわき小劇場と劇団いわき青春座の、地に足がついた活動の積み重ねを感じました。出演者も高校生役からおばあちゃん役まで、バリエーション豊かです。「ちゃぶ台の詩」のようなホームドラマは配役の都合からも上演するのがなかなか大変だろうと思いますが、こうして劇団公演として実現させているところ、ただただ恐れ入るばかりです。



作品は、「個人」の持ち物である娘の携帯電話を「家族」の長である父親が踏み壊すところに象徴されるとおり、「個人」と「家族」の葛藤を描いたものでした。家を出て歌手の道を進みたいという娘と、それにどう対応すべきか悩む父親。そしてなぜか家を出て老人ホームに行きたい祖母。それぞれの思いが紆余曲折を経ながら、やがて「家族」への思いに繋がっていきます。脚本が作品のテーマを上手に形象化していて、それを読み解くのも楽しみの一つでした。



先ほど述べた携帯電話の出だしから、理屈は崇高だが腕力のない左翼教師、そして魅力的な登場人物達を舞台中心で見守るちゃぶ台などなど。聞けば一年間にわたって稽古を積み重ねてきたそうで、モチーフに込められた意味とその射程を考えながら作品を作り上げていくのは、大変ながらもやりがいのあるものだったと思います。まさしく演劇祭のトリにふさわしい、いわき演劇の地力を見ました。




永らくお送りしてきた「いわき演劇祭2016」の観劇レポートも、今回が最終回です。
いわきアリオスがお届けするシリーズ「リージョナル・シアター」では、これからも地域と演劇の魅力を発掘し、皆さまにお届けしていきます。
また、「いわき演劇の会」の皆さん、そして会場となった「チームスマイル・いわきPIT」と「イタリアンバール La Stanza」の皆さんとも、一緒にいわきの演劇を盛り上げていきたいと思います。

いわき演劇祭とこのブログに最後までお付き合いいただいた皆さま、ありがとうございました!

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