【いわきアリオス演劇部】アシスタント・菅野蓮華さんによる体験レポートその1

2017.9.5

人と人、地域と地域、そして人と地域を繋げる、いわきアリオスの「リージョナル・シアター」。今年度はいわきの高校生たちと一緒に「いわきアリオス演劇部」を結成し、いわきオリジナルの台本づくりに励んでいます。
講師は東京で活動する劇作家・演出家の三浦直之さん(ロロ)と、福島市で活動する劇作家・演出家の大信(おおのぶ)ペリカンさん(シア・トリエ)です。
三浦さんは高校演劇のルール(上演時間60分以内、転換時間10分以内)に合わせた台本を書き、それを無償で高校生に提供するなど、高校生を対象にした様々な取り組みをされています。大信さんは、いわきアリオスのバックステージツアー「たんけんアリオス」で、高校生の出演者たちと作品づくりをしており、今回も三浦さんとともに、最後の発表会を演出していただきます。
2018年2月の発表会に向けて始動した「いわきアリオス演劇部」。その様子をアシスタントの菅野蓮華さんに紹介してもらいます。

【事業データ】
いわきアリオス演劇部
〔日時〕2017年7月15日(土)14:00~18:00
        16日(日)14:00~18:00
〔講師〕三浦直之(ロロ)、大信ペリカン(シア・トリエ)





文:菅野蓮華(かんの・はすか/東北大学 大学院 博士前期課程2年)

初めまして、菅野蓮華と申します。福島工業高等専門学校の演劇部を4年前に卒業したのち、現在は東北大学の大学院に進学し、災害シミュレーションの研究を行っています。今回は縁あって、「いわきアリオス演劇部」のアシスタントを務めながら、半年間、高校生の皆さんと一緒に台本づくりを体験することとなりました。

わたしが研究する災害シミュレーションとは何なのか、おそらく本記事をご覧になる方のほとんどがご存じないことと思います。災害とは地震・津波・大雨などの自然現象によって生じる被害全体のこと、そしてシミュレーション(解析)とは主にコンピュータを用いて実際の現象と同じような状況をつくることです。わたしは数ある災害のうち、山の斜面から道路まで転がってくる落石を対象としたシミュレーションを行い、地図上のどの位置が危険か調べたり、どんな対策を施したら安全であるかを考えたりしています。


※菅野蓮華さん

さて、そんな工学まっしぐらのわたしが、何故「いわきアリオス演劇部」のアシスタントとなったのか。実は福島高専卒業とともに演劇部を辞めてからもずっと、「自分の作品をつくりたい。演劇の台本を書きたい」という気持ちが残っていました。しかし残念なことに、いつまで経っても大学の工学部では台本の書き方を教えてくれません。

半ば諦めながら本業の研究を続けていたある日、福島高専時代にたいへんお世話になったアリオスで「いわきアリオス演劇部」が立ち上がること、しかも憧れの劇作家・演出家である三浦直之さん、大信ペリカンさんが講師を務めることを知りました。チャンスはここしかない、わたしはそう確信し、参加者の対象は高校生でしたが、無理を承知で連絡をしました。そして、アリオススタッフの萩原さんに相談し、参加者としてではなく、アシスタントとして関わらせていただくことになりました。


※講師の三浦直之さん(左)と大信ペリカンさん(右)

「いわきアリオス演劇部」に参加した高校生の皆さん、講師のお2人とは、7/15(土)の第1回ワークショップで初めて顔合わせをしました。集まった高校生の皆さんは、新しい環境、そして目の前に座る講師を前にして、初めは少し緊張の面持ちでしたが(わたしも講師の横に座らされて!ひどく緊張しました)、全員が自己紹介を終えるころになると、みるみる打ち解けて一人ひとりが個性を発揮していました。初回のメインとなったワークは、名前しか分からない架空の人物、太朗・リカ・マチルダの3人の「一代記」を描く、という課題です。はじめに、架空の人物が○○歳だったときのエピソードを、参加者がそれぞれ創作しました。つぎに、担当した人物ごとのグループに分かれて、集まったそれぞれのエピソードを繋ぎ合わせ、架空の人物の一生を完成させました。相談せずに書かれたエピソードが並ぶため、繋げる段階で当然ムリが生じてくるのですが、そこを大胆な発想によって乗り越えることで、ストーリーに立体感が生まれるのを体感しました。



わたしの専門分野の観点から、この「一代記」ワークショップを振り返ると、これは落石の逆解析に似ています。逆解析とは、実際に観測された落石の痕跡をもとに、落ちてきた石や現場斜面の物性値(パラメータ)を推定することです。断片的なエピソードから全体のストーリーや人物のパーソナリティについて想像をふくらませる「一代記」ワークショップは、つまり物語の逆解析であると言えるでしょう。とはいえ、てんでバラバラなピースを与えられて、そこから主人公の愛すべき人柄をどんどん見出してゆく参加者の皆さんの柔軟な発想は、コンピュータではとても真似できません。



他にも、40文字の会話で「昼休み」を表現するという厳しい制約で演劇をつくる課題が、三浦さんから与えられました。高校生4~5人ずつのグループに加えて、講師の大信さん、アリオススタッフの萩原さんと前田百恵さん、わたしの「アダルトチーム」が急遽参戦することに。軽やかな筆致と瞬発力のある演技で「昼休み」を表現した高校生の皆さんに対し、台本に凝りすぎて練習時間をまったく取れなかったアダルトチームは、悔しさの残る結果となってしまいました(練習さえすれば絶対おもしろかったんですけどね……)。



「いわきアリオス演劇部」は、指導の機会が少なかったり、ひとりでの作業が心細くなったりする劇作(台本づくり)を学ぶワークショップであると同時に、高校卒業後も演劇を続けたいと考えている参加者の皆さんを、後押しできるような経験を共有する場でもあります。まさに卒業後も演劇を続けたい一心でアシスタントとなったわたしからも、ワークショップ全体を通して得た経験を、最後には高校生の皆さんへ伝えられるよう頑張りたいと思います。来年2月の成果発表会まで、どうぞよろしくお願いします。

■リージョナル・シアター2017 いわきアリオス演劇部 発表会
〔日時〕2018年2月17日(土)15:00
        18日(日)15:00
〔会場〕いわきアリオス 大リハーサル室
〔料金〕自由/無料(要事前申込)※年齢制限なし
〔作・出演〕いわきアリオス演劇部
〔演出〕三浦直之(ロロ)、大信ペリカン(シア・トリエ)
※12月1日(金)10時~受付開始

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