【スキマチイワキ】発酵醸造部 2017年9月3日(日)酒米農家・丹野友幸さんを訪ねて

2017.9.27



皆さんこんにちは。広報グループの長野です。いわきアリオスでは2015年から、企画制作課と広報グループのスタッフが「自分の好きなもの」をキーワードに「いわき」という地域の魅力を探り、発信していく「スキマチイワキ」という取組みを続けています。

今回は番外篇? 皆さんは日本酒が「お米」から作られるのはご存知だと思います。その「お米」は、私たちがふだん食べているコシヒカリとかササニシキとか、天のつぶ(福島のブランド米)といったお米から作られていると思いますか?

実は日本酒は、「酒米(さかまい)」で作られることがほとんどなのです。例えば「山田錦」という銘柄、代表的な酒米の品種です。食米も酒米も、田んぼだけみているとまったく同じお米に見えますが、酒米はどんな特徴があるのだろう……。

7月には、いわき初(発)のワイナリー「いわきワイナリー」で育ちつつある、ぶどう栽培の現場をお訪ねしました。今回は、日本酒のもととなる、酒米の生産現場におじゃましました。

いわき市内で酒米を生産している農家さんはありません。ということで、今回は福島県福島市に入り、東北自動車道松川パーキングエリアにほど近い水原地区で「未来農業株式会社」を営んでいる米農家、丹野友幸さんをお訪ねしました。9月3日(日)のことでした。

スキマチイワキ画像
(丹野さんの田んぼ周辺の地図を見ながら、田んぼに引く水源の話を伺いました)

丹野さんは、山形県長井市で「磐城壽(いわきことぶき)」という銘柄の日本酒を製造している「鈴木酒造店」の契約農家として、酒米を生産しています。鈴木酒造店は、震災前は浪江町で酒造りをしていましたが、津波と原発事故の二重パンチで運命が一転、拠点を追われ、山形県長井市で酒造りを再開しました。今年(2017年)6月には、全国新酒鑑評会で「一生幸福」で金賞を獲得しています。

今回、丹野さんとの縁をつないでくださったのは、震災後の鈴木酒造店の酒造りの過程を、山形に足繁く通いながら映像を撮り続けている坂本博紀さん。いわきアリオスで開催した「第2回いわきぼうけん映画祭」(2013年)では、ドキュメンタリー映画「磐城壽しぼりたて23BYがあなたの杯にそそがれるまで」でいわき部門グランプリを獲得し、現在、スキマチイワキの活動記録の撮影、編集もお願いしています。

丹野さんの農家では、近くに福島を代表する酒蔵「金水晶(きんすいしょう)」の蔵があり、その杜氏が水原地区の出身だったこともあって、約20年前、お父さまの時代から酒米の生産を始めたそうです。現在生産している酒米は、「五百万石(ポピュラーな酒米)」、「夢の香(福島県の品種)」、それに「山田錦」を少々とのこと。他に食米や、牛のエサになる米も育てているとのことで、その話も詳しく聞いてみたくなりました。

酒米は食米とは違って、低タンパクの米がいいとのことで、育ちすぎないよう肥料の量も制限し、食米の獲れ高の2割減程度に抑えるとのこと。稲の背も高いので倒れやすく、台風が来たりすると大変らしいですが、内陸部は温帯低気圧になってから通過することが多く、強風の影響は受けなくて済むとのことでした。

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(写真右、身長182㎝と長身の坂本博紀さんのお腹あたりまで丈がある酒米の稲)

今年は夏が涼しく、収穫に影響が出ないか心配されましたが、9月にしっかり晴れてくれれば、収穫時期が遅れるが問題なさそう、とのことでした。坂本さんによると、日本酒はは杜氏の腕でカバーできるところがあるそうですが、ワインのほうがブドウの質がもろに影響を与えるので心配、と話していました。

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丹野さんの案内で、田んぼも見せていただきました。水原地区という名の通り、水源が豊富な場所。写真の穂の先っぽをご覧いただくと、長いヒゲがあります。これが酒米「五百万石」の特徴とのこと。そして籾を開いて中身を見せてもらったら、白い液体の状態でした。これを「乳熟期(にゅうじゅくき)」というそうです。ここから、我々が知るお米の形になっていくんですね。(補足:このあと10月8日に無事収穫を迎えるいう話を伺いました)。

丹野さんの会社では、米を使って糀(こうじ)や味噌も作っています。これらの発酵物も、食米で作るより酒米で作る方が断然作りやすいとのことだったので、これはまた別の機会に話を聞こうと思います。

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丹野さんは行動的な方で、最近、福島県北部の酒米農家や酒造家、大学等に呼びかけて「酒米研究会」と立ち上げ酒米つながりの横の交流を広げたり、また今年は「19歳の酒プロジェクト」をスタートさせたと話していました。

これは県内の19歳の若者に、酒米の田植えから収穫、酒の醸造までの過程を経験してもらい、20歳になった翌年の4月、その酒を飲って祝いながら「日本酒の味わい方を知ってもらいたい」と丹野さんは語ります。今年は約1トンの収穫が予想され、1升ビンで約300本のお酒ができそうとのこと。半分は20歳の時に飲んでもらうお酒に、残りの半分は、1年間瓶で保管し、21歳になった時に飲んでもらおうと計画しているそうで、「もうその2つの酒の銘柄まで決めています」と語る丹野さんはとても嬉しそうでした。

私が20歳だった大学時代は、日本酒といっても銘柄も醸造方法についての知識がほとんどなく、コンパで行った安い酒場で、味も分からないまま先輩からたくさん飲まされ深酔いした挙句、敬遠しがちになったことを覚えています。似たような話を丹野さんも福島大学の学生から聞き、「それは残念! 人生損をすることになる!」と思ったそうです。

日本酒の飲み方、楽しみ方を、製造段階から知ったり、また生産に関わる大人たちの話を聞きながら飲めば、味わい方も確実に変わるはず。そして日本酒を飲んでくれるひとがもっと増えることを丹野さんは夢見ます。福島の20歳たちは、こんな情熱的な生産者が近くにいて幸せだなぁと思いました。同時に、丹野さんや鈴木酒造店とつながる若者たちが、どのような顔をして日本酒を味わい、大人になっていくのかも、見届けてみたいと思いました。

ということで、丹野さん、また田んぼやプロジェクトを見学させてください。よろしくお願いします。

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