【さきどりアリオス】公演直前!小山実稚恵さん最新インタビュー(2018年1月収録)

2018.3.23


小山実稚恵最新インタビュー

2018年4月14日(土)。いわきアリオス開館10周年のメイン・イベント「小山実稚恵ピアノ・リサイタル〜10年の時を刻んで」の開催まで、残り1カ月を切りました。
大ホールに配備した2台のスタインウェイ・ピアノの選定者でもある小山さんのソロ公演は実に10年ぶりとなりますが、開館以来、いわきとの関わりは途切れることなく続いていました。
今回の公演への意気込みや、いわきへの想いを、小山さんが来市するたびに取材を続けている“番記者”柿沼美佳さんを相手にお話しいただきました。


■プロフィール
小山実稚恵(こやま みちえ)ピアニスト
チャイコフスキー、ショパンの二大コンクールに入賞した唯一の日本人ピアニスト。ショパン・コンクールを始め、チャイコフスキー、ロン=ティボー、ミュンヘン他のコンクールで審査員を務める。2011年の東日本大震災以降、被災地の学校や公共施設等で演奏を続け、仙台では2015年より自ら企画立案したプロジェクト『こどもの夢ひろば "ボレロ"』も開始。CDは 『バッハ:ゴルトベルク変奏曲』他、ソニーより30枚をリリース。2005年度 文化庁芸術祭音楽部門大賞、2015年度 文化庁芸術祭音楽部門優秀賞、2016年度 芸術選奨文部科学大臣賞、2017年度 秋の褒章にて紫綬褒章受章。いわきアリオスには、2008年、10年、11年、13年と節目の公演に必ず登場している。


柿沼美佳(かきぬま みか)フリージャーナリスト
 福島県白河市生まれ、小学4年次にいわきへ転居。大学時代に東京で様々なことを覚え、福島にUターン。地元新聞社で13年弱の記者生活を送る。書くことを”仕事”にしようと思うようになり、2015年夏からフリーランスに。音楽の好みは幅広いが、好きな曲はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番とドヴォルザークの弦楽四重奏曲アメリカ、ショパンの舟歌。




取材・文:柿沼美佳
※このインタビューは2018(平成30)年1月に行われました。

小山実稚恵最新インタビュー

大ホールで初めて小山さんのピアノを聞いた時の感情は、今でもはっきりと思い出すことができる。こぼれ落ちた涙のことも。あれから10年。この間、震災で傷ついたいわきに、音楽の力で救いの手を差し伸べ、震災による休館を経たピアノに再び魂を吹き込んでくれたのも小山さんだった。アリオスのピアノの母とも言うべき存在で、アリオスの節目を奏でるのは、この人をおいて他にはないだろう。
  ◇  ◇
ちょうど、このインタビューの直前に行われたのが、いわき市立植田小学校でのおでかけアリオス(2018年1月23日)だった。初めて触れるであろう数々の曲に対して、5年生の児童たちが見せた反応は鮮やかだった。
「(物理的に)すぐ近くで、弾いた瞬間の音を聴く機会はなかなかないはずで、ダイレクトに楽しんでもらえたのではないか。弾いていて、とても楽しい反応だった」

小山実稚恵最新インタビューそんな子どもたちに対し、自分の使命の一つは「伝えること」と考える。常に、自分が放つ音の先にいる人のことを考えるなかで、子どもに対する思いの強さをいつも感じる。
「音楽の鑑賞って、知識を増やすことの一環ではあるけれど、もっと大切なものがある。感じることの大切さ。そして、曲には意味や思いが込められて生まれたということを知ってもらいたい」

植田小でも、曲の背景や自分の思いを優しい言葉に乗せて、子どもたちへ届けた(【事業レポート】おでかけアリオス 植田小学校 小山実稚恵ピアノ・コンサート)。初めての出会いに、心弾ませた子どもたちの姿がそこにはあった。
「ピアノが身近になってくれたかな」
あのひと時をまぶたに思い浮かべながら、優しく微笑んだ。


音楽でしか伝えられない
「心」「精神」を届けたい


「おでかけアリオス」の演奏曲は前日、学校を訪れた時に決めた。窓の外に降る雪、学校の雰囲気、そして、5年生が思春期の入り口に立っていることを思っての選曲だった。“伝える”人間として、4月のリサイタル、ショパンにシューベルト、ベートーヴェンはどんな思いで選曲したのだろうか。
たとえば、ショパン。
「(ショパンの)若い時と、晩年の曲。ショパンの音楽は一貫している。特別な美意識はショパンだけのものなんです。4月の空気感を交えて演奏したい」

そして、シューベルトは、心の繊細な表現に重きを置き、ベートーヴェンは密な精神を表現する。
「シューベルトでは、自分の微妙な心のひだの響きというか。演奏するのは大ホールだけれど、外気ではなく、ある種の閉じられた空間での響きを意識する。ベートーヴェンでは、感じられる永遠感であったり、いま生命が宿った、脈打ち始めたと感じる瞬間というもの。それぞれの作曲家の音楽を、はっきりと打ち出すことができればと思う。そこを感じてほしい」

 「(アリオスオープンの)10年という大きな区切り。お祝いの気持ち、時の重み。いろんなこともやりきってきたから、華やかさ、それだけではなく、力強さ、深さ、大きさ、を表現したい。10年の道がなければ、出てこない音もあると思うし」


「好きなもの」を力に、前へ

この10年を振り返るに触れなければならないこと。東日本大震災。宮城県仙台市生まれ、岩手県盛岡市育ち、東北にルーツを持つ小山さんにとっては、とても大きな出来事だった。
震災によって改めて感じたことは、「明日はないかもしれない。生きるとはそういうこと」だという。

小山実稚恵最新インタビュー
(2011年10月13日。震災後、7ヵ月余りの休館期間を経ていわきアリオスが再オープンする直前に小山さんが来館。150名の市民を招待し「ピアノ“再開”コンサート」を開いた 撮影:鈴木穣蔵)

そして、音楽への思いの深さにも気がついた。
「音楽は生活に直結しないかもしれない。でも、生活をどうするかという時にある、音楽の重要性にあらためて気づかされた。音楽が心の支えにもなる。音楽がこんなにも好きだという気持ち。震災があって、自分の心に向き合うようになって、音楽への気持ちがより強くなった。ったそれは震災がなくとも知らねばならなかったけど、でも、辛いことから学ばねばならない。人間、好きなことを見つけないと、前に進めないから」
小山さんの音楽に、前を向いて歩く力をもらった一人として、大きくその言葉にうなずいた。

震災時、音楽(芸術)では腹は満たされないが、状況が少し落ち着いた時に欲したものの1つが、好きな音楽だった。音楽は、そういうときのためのものではないか。恐れ多くもそんな話を向けると、
「まさにそうだと思う。好きなものを見つけるというのは、人生にとってどれだけ幸せなことなのかと感じる」


次の世代に残したいもの

小山実稚恵最新インタビュー
(2013年6月、開館5周年記念を記念特別演奏会「小林研一郎指揮 NHK交響楽団 with 小山実稚恵」 撮影:堀田正矩)

2015年にはデビュー30周年を迎え、昨年秋には紫綬褒章を受章。まさに、豊穣の時を迎えた。
「目には見えないもの、手探りでやってきたことなので、それを評価していただけたことは、励みになる。最初に教わった先生や、今回再びコンサートをさせていただくアリオススタッフなど、人の力、縁、運命というものを感じる」
そう話すと、面映い表情を浮かべた。

その姿に、この10年感じてきた、変わらない人柄を思う。
驕(おご)らず、昂(たか)ぶらず、己を戒め、妥協しない。人への深い思いやり……。
「私は田舎育ちでのんきだから……。英才教育で隙間なく詰め込まれなくてよかったと思うことがある。今の年齢になったからこそ弾けるのだといういう曲もあったり。今の学生さんたちはは、とても磨かれている。でも、演奏の完成度を高めようと、ミスを恐れるあまり大切なものを失うこと。コンクールでは、やりきった人を評価してあげないといけないけど、可能性を見ないといけないのではないか」

さらに、次の世代の人たちを思う言葉が続く。
「本質を感じ取る力は共通している。のびのびと、たとえいびつでも、やりたいという気持ちを、こういう世の中だからこそ、大切にしてあげたい。競争に負けてもいい。数をこなす大事さもあるのだけど、目の前のことに惑わされずにやり続けることの大切さを知ってほしい」

初めてピアノに触れ、わくわくした幼き日からピアノを愛し続け、日本を代表するピアニストという高みにありながらも決して妥協せず、一意専心に求道し続ける姿に裏打ちされた言葉は深い。そんなピアニストが奏でる、10周年を飾る音を想像すれば、こちらも期待が止まらない。ぜひ、目の前でその音色を通し、小山実稚恵という人のスピリットを、パッションを、存分に感じてほしい。

小山実稚恵最新インタビュー
(2009年2月9日、ピアノ試奏会より 撮影:満田 聡)

■公演情報■
いわきアリオス10周年記念公演
小山実稚恵 ピアノ・リサイタル ~10年の時を刻んで

〔日 時〕2018年4月14日(土)14:00開演
〔場 所〕いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
〔料 金〕一般 3,000円、学生 1,000円(未就学児入場不可)
〔発売日〕2018年1月27日(土)10:00~(1回券・セット券とも)
公演&イベントガイド「小山実稚恵 ピアノ・リサイタル ~10年の時を刻んで」

日本ピアノ界の第一人者で、2017年11月には紫綬褒章も受章した小山実稚恵さんは、当館大ホールに保有する2台のピアノの選定者。2008年4月の開館記念公演にも出演しています。仙台生まれ、盛岡育ちの小山さんは東北への想いが深く、震災後、いわき市民への無料公演や「おでかけアリオス」小学校公演のために来市し、音楽で我々の背中を押してくださいました。今回は10年の時を経て成熟した大ホールのピアノの響きを、皆さまにお届けします。

〔ご予約・お問合せ〕
 アリオスチケットセンター 電話 0246-22-5800(10:00〜20:00 毎週火曜定休)
  ※2018年2月13日(火)、3月13日(火)は全館休館日

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