【アリオス・アーカイブス5】 2008年4月20日(日)小林研一郎指揮 NHK交響楽団 with いわき市民第九の会合唱団 コバケン“炎の第九”コンサート、の巻

2018.4.20


2008コバケン炎の第九コンサート画像

いわき芸術文化交流館アリオスは、おかげさまで2018(平成30)年4月に、第一次オープンから満10周年を迎えました。
いつも利用してくださっている皆さま、本当にありがとうございます。
この不定期連載企画では、アリオスの10年あゆみのなかから、特に印象的な出来事を振り返っています。
第5回は2008(平成20)年4月20日(日)、いわきアリオスの第一次オープンを記念したメインイベント、小林研一郎(指揮)NHK交響楽団 with いわき市民第九の会合唱団 コバケン“炎の第九”コンサート」の巻、です。




いわき芸術文化交流館アリオス オープニング公演
小林研一郎指揮 NHK交響楽団 with いわき市民第九の会合唱団
コバケン“炎の第九”コンサート
日時:2008年4月20日(日)
いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
出演:指揮 小林研一郎
   ソプラノ:森 麻季 メゾ・ソプラノ:林 美智子
   テノール:櫻田 亮 バリトン:成田博之
   管弦楽:NHK交響楽団
   合掌:いわき市民第九の会合唱団

文:長野隆人(広報グループ チーフ)

冒頭にご覧いただいたのは、演奏直後、カーテンコールの写真でした。
いわき出身の世界的指揮者・小林研一郎さんの右側でつないだ手を挙げておられるのが、この公演のために、およそ5ヵ月間にわたって合唱団の指導を担当された先生方です。左から、石河清先生、岡部林之助先生、桐原帒純(たいじゅん)先生。お三方は、開館から10年の間に相次いで鬼籍に入られてしまいました。先生方の総力を結集した熱血指導なしには、この公演は、そしてこの合唱団は成功しなかったはずです。そしていわきアリオスの船出も順調なものにならなかったかもしれません。
いわきアリオスの10年を振り返る上で、絶対に忘れることができない恩人です。

■225人の大合唱団が生まれるまで

2008コバケン炎の第九コンサート画像2008コバケン炎の第九コンサート画像

こちらは2007年7月26日に発行された「幻の」アリオスペーパー創刊準備号。この紙面で、翌2008年4月のオープニング公演が小林研一郎先生の指揮、NHK交響楽団による「第九」が演奏されることが発表され、市民合唱団の募集の告知が発表されました。
N響が市民合唱団と共演をするというのは、きわめて異例のことでした。


同年8月1日(水)から9月14日(金)までの募集期間中に、定員200人程度のところ、約2倍の403名の応募がありました。
もともと「世界のコバケン」と「N響」と共演する以上、合唱団のクオリティを高めることは必須で、応募の多寡にかかわらずオーディションを行う予定でした。そのオーディションは、10月6日(土)、7日(日)、8(月・祝)の3日間にわたって、完成したばかりのいわきアリオス3階中リハーサル室で行われました。
市民の方に、いわきアリオス館内に入っていただいた最初の機会となりました。
参加者の皆さんには、課題曲の「故郷」「赤とんぼ」「荒城の月」「カーロ・ミオ・ベン」(イタリア歌曲)4曲のうちいずれかを歌っていただいたあと、「第九」で希望するパートの一節を歌っていただきました。時間にして1人2分ほど。

それを、小林研一郎先生の信頼の厚い指揮者の三河正典氏、小林昭裕氏、声楽家の中島敬子氏、水谷ひさ子氏の4氏に審査していただき、いわきアリオスチーフプロデューサーの児玉真が、すべての審査過程に立ち会いました。

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オーディションはもちろん非公開。すべての方が同じ条件下で審査を受けられるようにしました。
ただ当時はアリオスの動向に関するマスコミの注目も高く、オーディションも大きな「ニュース素材」になり、取材の希望もありました。
しかしオーディションに取材を入れ、もしそのとき歌っている方が緊張して落選したとしたら、そして掲載された写真から顔や名前がわかってしまったら大変なことになります。そこで、このときはアリオスに着任したばかりの施設サービスグループがスタッフがオーディションを受けている体で撮影した写真をマスコミに配信させてもらうことで、納得いただいたのでした。マスコミの皆さんに、細々としたことを説明し、ご理解いただくというのもオープン前からオープン直後にかけての重要な仕事でした。

オーディションの結果、誕生したのがこちらの合唱団。

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合格したのは、定員の200名より少し多い225名の皆さん。
女声が159名、男声が66名。年代構成は、10代が41名(18.2%)、20代が17名(7.5%)、30代が34名(15.1%)、40代が47名(20.8%)、50代が46名(20.4%)、60代が27名(12%)、70代が11名(4.8%)、不詳2名という割合でした。

2008コバケン炎の第九コンサート画像 2008コバケン炎の第九コンサート画像

最年長は79歳の男性、最年少は14歳(翌年4月に高校1年になる)。その差65歳という、幅広い世代の「夢」をのせて、「いわき第九の会合唱団」は船出することになりました。

■練習を通して合唱団が「Bruder(兄弟)」になる

合唱団の練習は、2007年11月10日(土)から本番まで約20回が行われました。
オーディションの審査員をつとめた中島先生たちによるドイツ語のトレーニング(2007年いっぱい)、石河清先生、岡部林之助先生、桐原帒純先生によるパート・セクション練習と、3人の先生が週替わりで指揮台に立つアンサンブル練習を毎回みっちり行いました。
そして練習開始前には、のちに「おでかけアリオス研究会アーティスト第1期」になってくださるソプラノ歌手・渡邊奈保子先生が指導役を買って出てくださり、ヴォイストレーニングの自主練が行われ、毎回たくさんの団員が参加しました。



練習2回目の11月18日(日)には、通常の練習を終えた後、小林研一郎先生による「第九」に関する特別講演が行われました。
このとき、レクチャーだけでなく歌唱指導もされましたが、合唱団がまるでマエストロの魔法にかかったように、一つひとつの音符に命を吹き込みながら歌いだしたことに、その場にいた誰もが驚きました。マエストロも、この最初の指導で「これなら行けそうだ」という手応えをつかまれたようでした。

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レクチャーのあと、2階カンティーネに会場を移して懇親会が行われました。
その写真が懐かしいので少しご紹介します。

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左から、愛弟子を前に上機嫌で挨拶される石河 清先生。小林研一郎先生、いわき市民第九の会副会長の有賀敬四郎・いわき商工会議所会頭(当時)、同会長の櫛田一男・いわき市長(当時)。

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小林研一郎先生のいわきでのもう1人の恩師で、「いわき市民第九の会」では相談役を務めていただいた若松紀志子先生とのツーショット。
若松先生も4年後の2012年に96歳で亡くなられました。



宴もたけなわとなったところで、小林研一郎先生のピアノ伴奏で、石河清先生が朗々と歌い始めました。写真は「千の風になって」を歌われているところ。小林先生は、譜面なしで即興的に伴奏をつけていました。

■チケットの争奪戦

こちらの写真は、オープニング公演の「第九」のちらしです。
当時マーケティンググループ(現・広報グループ)のスタッフだった村上千尋さんが、「参加した皆さんの、誰が欠けてもこの公演は成り立たない。その一人ひとりの思い出に残るように」と、合唱団のメンバー全員の名前をちらしオモテ面にローマ字で記載したものを作りました。

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まちにとって、何十年に一度しかない、新しいホールのオープニング公演。しかも200人以上もの市民の皆さんが地元の英雄・小林研一郎先生の指揮、日本一のオーケストラNHK交響楽団と、日本を代表するソリストとの共演で「第九」を歌うわけです。しかし、その公演を観ることができるのは、1,705人のみ。「なんとかして聴きたい」という方からは、相当前から「チケットの入手方法」についての問合せが入りました。

我々スタッフも、なるべく不公平感が出ないよう、また、まずは市民の皆さんが優先的に購入できるよう検討を重ねました。その結果2007年12月から翌1月に、まずは「いわき市民先行枠」ということで往復ハガキでの申込みを受付け、その後、2008年3月1日(土)に、電話予約(WEB予約なし)のみで、残りのチケットを販売するということにしました。

往復ハガキ申込の周知には様々な手段を駆使したこともあり、予定枚数の850席を4.1倍も上回る3,481席分の申込みがありました。
そこで立会人が見守るなか、いわきアリオス開設準備室の阿部直美室長(初代館長)、大石時雄室次長(支配人、現・6代目館長)、津田一浩経営総務課長(現・文化スポーツ室長)が抽選を行って当選者を決めました。

2008コバケン炎の第九コンサート画像 

3月1日(土)の電話予約は、残りのチケットをすべて売り切りました。まだ事務所にオンライン・チケットシステムが導入される直前だったため、事務所内に設営した「即席チケットセンター」で、紙に出力した残席表を見ながら、どんどん席を埋めていくアナログな方式が採用されました。
その日は開設準備室のスタッフ15人体制で電話応対をしましたが、1時間も経たないうちにソールドアウト。あとは夕方までひたすら謝り続けました。

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このときのエピソードは、ブログ「【アリオス・アーカイブス2】“炎”の仮設チケットセンター、の巻」で詳しく取り上げましたので、よろしかったらお読みください。

■そして本番へ

合唱団の練習は、2008年1月までの基礎固めに加え、2月からは小林研一郎先生のお弟子さんで、東京を拠点に活動している三河正典先生、富澤裕先生、酒井敦先生に交代で来市していただき、大ホールのステージ上でのアンサンブル練習を中心に指導していただきました。
「小林研一郎式」の第九演奏の水準に応えることができるよう、さらなるレベルアップを図ったのです。

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そのうえで、3月と、4月の本番1週間前に小林研一郎先生に最終的な指導をしていただき、本番を迎えました。

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合唱経験もなく一から勉強を始めた人、長年合唱団に所属してきた人、音楽大学を出て本格的に活動している人、高校生や中学生など、さまざまな経験値・年齢の方が集まった合唱団でしたが、小林研一郎さんのタクトのもと、短期間で練習したとは思えないほどのレベルの高い合唱が披露されました。

2008コバケン炎の第九コンサート画像

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そして、N響の皆さん、豪華ソリストの皆さんの熱演により、いわきアリオスは、これ以上はないという、感動的なオープニングを迎えることができました。

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合唱団の水準の高さは、これまで市民合唱団とは共演してこなかったNHK交響楽団からも、「強い刺激を受けた」という感想をいただいたことからも明らかだと思います。
また、このように音楽的な関心の高い市民がたくさん住んでいるまちであることが、翌2009年から、東北における唯一の「NHK交響楽団 定期演奏会」が、ここいわき市で始まるきっかけの一つになったのです。

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いわきアリオスの進むべき道すじが、はっきりと示された記念碑的な1日でした。

■小林研一郎出演 今後の公演■
いわきアリオス10周年記念
小林研一郎 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 in いわき
ヴァイオリン=徳永二男

〔日 時〕2018年9月24日(月・休)14:00開演
〔場 所〕いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
〔料 金〕プラチナ席(限定200席) 7,000円、S席 6,000円
     A席・車いす席 4,000円、学生はS・A席半額(未就学児入場不可)
〔発売日〕2018年4月22日(日)10:00~
公演&イベントガイド「小林研一郎 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 in いわき ヴァイオリン=徳永二男」

〔ご予約・お問合せ〕
 アリオスチケットセンター 電話 0246-22-5800(10:00〜20:00 毎週火曜定休)
  

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