【さきどりアリオス】 劇作家・演出家 谷賢一さん 福島三部作・第一部「1961年:夜に昇る太陽」いわき取材レポート

2018.4.20

文:ハギハラヒロキ(企画制作課 演劇・ダンス事業グループ チーフ)

 2018年7月7日(土)、8日(日)にいわきアリオスの小劇場で世界初演を迎える、劇団DULL-COLORED POP vol.18 福島三部作・第一部「1961年:夜に昇る太陽」。この公演について、わたしはしきりに「いわきで初演」を押しております。それがどうした? と思われるかもしれませんが、東京を拠点に活動している劇団の場合、東京以外での上演は東京公演のあと、もしくは過去作品の再演というケースがほとんどなのです。しかし、今回はいわき公演のあとに東京公演が組まれています。これには、福島の物語をまずは福島の方に観ていただきたいという谷さんの想い、福島を舞台にすることへの覚悟と責任が込められています。

○2018年2月に行った谷賢一さんへのインタビュー
【さきどりアリオス】劇作家・演出家 谷賢一さん 福島三部作・第一部「1961年:夜に昇る太陽」インタビュー/2018年2月


 2月12日(月・休)に打ち合わせのためアリオスまでお越しいただいた谷さんと、翌日13日(火)は一緒にいわき取材を行いました。2年半をかけ福島を現地・人・書籍から徹底的に取材し、すでに作品の根幹となる部分の取材は終えていますが、せっかくいわきまで来ていただいたので、どこか行きたいところはありますか? と尋ねたのでした。谷さんの答えは「(いわき市石炭・化石館)ほるるに行きたい」でした。正直、「え? 今さらそこ?」と思いましたが、人との出会いを優先させてきた谷さんは、いわゆる観光施設にはあまり足を運んでいなかった様子。それならばとご案内しました。



 「ほるる」には常磐炭田の採炭の歴史と、市内で発掘された化石などが展示されています。ひとつひとつの資料にじっくりと目を通し、当時の炭鉱の雰囲気が味わえる「模擬坑道」も体験していただきました。すでに書籍などでは常磐炭田のことも調べていたそうですが、まだ知らないこと、ここでしか得ることのできないことを探す谷さんのまなざしは真剣。わたしは何度か「ほるる」を訪れていますが、谷さんに触発されて、この日は改めて館内をしっかりと見てまわりました。

 

 「ほるる」を一通り見終えた谷さんを、次は「劇団ごきげんよう(※)」の内郷編でお世話になった渡邉為雄(わたなべ・ためお)さんの個人博物館「みろく沢炭鉱資料館」にご案内しました。「劇団ごきげんよう」では、2016年9月に渡邉さんにお話を聞かせていただき、それを演劇作品にしたものを、2017年12月に内郷編として上演したのでした。
※「劇団ごきげんよう」とは、いわきに住む方からお話を聞き、一人ひとりの人生の物語を演劇にする活動を、2015年度から続けているアリオスの企画です。

○「劇団ごきげんよう」による渡邉為雄さんへの取材の様子
【スキマチイワキ】「劇団ごきげんよう」がゆく! 内郷インタビューその6



 「みろく沢炭鉱資料館」に到着すると、渡邉さんはちょうどテレビ局の取材を受けているところでした。これは忙しいところにお邪魔してしまったかな……と思っていたところ、渡邉さんのお手伝いにきていた「いわきヘリテージ・ツーリズム協議会」事務局長の菅野昭夫(かんの・あきお)さんが、お話を聞かせてくださいました。「いわきヘリテージ・ツーリズム協議会」は、産業遺産(ヘリテージ)の観光(ツーリズム)を通じて、いわきの歴史や文化、まちづくりや近代産業遺産、食と海と山と空と温泉を思う存分に楽しめる提案・交流を推進する目的で、2007年に設立されました。菅野さんは、渡邉さんが保管されている当時の道具の使い方など、丁寧に説明してくださいました。こういった書籍や資料だけでは得ることのできない、現地に足を運ぶからこそ得られる出会い・体験が、演劇という生身の人間による舞台芸術に命を吹き込むのだと思います。谷さんはこれまでに出会った、たくさんの人々の記憶と思い出、体験と感情をひとつずつ紡ぎながら、現在も創作に取り組んでいます。





 最後に演劇の話を少し。谷さんの作品は、演劇界の大先輩・永井愛さんから「斬新な手法と古典的な素養の幸せな合体」と評されています。永井さんは日本を代表する劇作家の1人で、アリオスでは2009年と2010年に「劇作家トーク」に出演していただき、ご自身の劇団「二兎社」でも2010年にアリオス公演を行っています。
 永井さんのお言葉通り、谷さんは現代演劇の最先端を突っ走っていながら、その土台には古典作品に対する膨大な知識と深い愛情が込められています。谷さん自身は、大きくて一見するとちょっと怖い印象を受けますが、相手のお話を聞くときの姿勢は、常に相手を尊重し、とても丁寧です。作品だけでなく、そんな「谷賢一」の魅力も知っていただきたいと思い、公演の関連企画として、6月に演出家トークと演劇ワークショップを企画しました(4/21受付開始!)。演劇は人がつくるもの。その人を知ることで、さらなる魅力を発見することができると思います。まだ7月の公演を観るか迷っている方も、まずは谷さんとの出会いを楽しんでいただけると嬉しいです。


【予約受付中!】
DULL-COLORED POP vol.18 福島三部作・第一部「1961年:夜に昇る太陽」
〔日時〕2018.7/7(土)18:30開演 8(日)14:00開演
〔会場〕いわきアリオス 本館4階 小劇場
〔料金〕全席指定 3,000円 高校生以下 1,000円
※未就学児入場不可、託児サービス有(先着順・無料)

【関連企画】 ※4/21(土)10:00~ 申込受付開始(電話・窓口のみ)
演出家トーク
〔日時〕2018.6/2(土)18:00~20:00
〔会場〕いわきアリオス 本館2階 カンティーネ
〔料金〕無料(要事前申込)
〔出演〕谷賢一 〔司会〕江尻浩二郎

演劇ワークショップ
〔日時〕2018.6/3(日)「身体と出会う」10:00~13:00 「声を見つめる」14:00~17:00
〔会場〕いわきアリオス 本館5階 大リハーサル室
〔料金〕各回1,000円 2回通し 1,500円(要事前申込)
〔講師〕谷賢一

★以下2作品のお得なセット券もご用意しています。8/11(土・祝)、12(日)ナイロン100℃との2公演セット券 7,000円(一般のみ)
●結成25周年を迎えるナイロン100℃が、8年ぶりにアリオス登場!いわきアリオス開館10周年記念 ナイロン100℃ 25周年記念 46th SESSION「睾丸」

関連イベント

この記事を読んだ人は以下の記事も読んでいます。

    共通フッター

    PAGE TOP

    本サイトの著作権(copyright)