【スキマチイワキ】「テッペンカケタカ〜綱木・クマガイソウの物語」影絵制作日記

2018.4.24


文:前田優子(企画制作課)
 SEA WAVE FMいわきの協力のもと2015年からスタートした、地域とアートを考えるプロジェクト「スキマチイワキ」。アーティストたちといわきのあちこちへスロートリップしながら、これまで気づかなかった新しいいわきを発見していくプロジェクトです。

 2018年3月16日から20日までの5日間、影絵師の川村亘平斎(かわむら・こうへいさい)さんと一緒に、田人町石住綱木地区に滞在してきました。綱木は、全国的にも珍しい、山野草「クマガイソウ」の大群生地があります。これは、綱木に生まれ育った平子長雄さん(たいらこ・ながお/故人)が、自宅裏の杉林で大切に栽培し株を増やし、大きなお花畑に育てたものです。クマガイソウの咲く5月には、人口10人弱の小さな村に、3,000名を超える見学客が集まるほどの盛況となります。


 この花畑と、長雄さんはじめ綱木集落の人々の物語を、何かの形で記憶に残る作品にしてみたい、と思ったのは3年前のことでした。
 川村さんは、インドネシア、主にジャワ島とバリ島で、ヒンドゥー教の祭礼で演じられる影絵芝居「ワヤンクリット」と伴奏楽器でもあるガムランを現地で学び、日本各地でその地の伝説をもとにした影絵芝居を創作・上演する活動をされています。


(川村亘平斎さん)

 2016年、アリオス ワールドミュージックコレクションの関連企画として実施した「ワヤン影絵芝居ワークショップ」の講師としてお越しいただいたときに、すでに綱木のことをご相談していたのですが、直後から影絵の勉強のために2度目の留学に旅立ちました。 昨年秋の帰国を機にようやく念願かない、地域の皆さんのご協力のもと、取材と影絵作品の制作に着手することができたのです。

 初日(3/16)は、綱木にお住まいの皆さんへのインタビューから。綱木集会所には、7名の方がお集まりくださいました。

 長雄さんが、15年前に自宅裏庭の一角でクマガイソウを育て始めた頃の話から、お隣に住むヒテ子さんがその手伝いを始め、その輪がだんだん綱木全体に、そして綱木を離れた人々へ広がっていったお話。昭和時代の綱木の人々の生活、この地の歴史やお祭りなどの風習、そして不思議な伝説の数々…… さまざまなお話を伺いました。最初は「なんも面白い話なんかねえよ、何が聞きてんだ?」とおっしゃっていた方々も、時間が進むにつれ表情も明るく、たくさんお話しくださり、あっという間に時間が過ぎていきました。

 翌日(3/16)は、お話に出てきた場所を一つひとつ、集落代表の文男さんにご案内いただきながら見て歩きました。歩いていると、東西を山に囲まれた奥行きのある綱木の土地が、まるで大きな大きな腕に包まれているような、不思議な心地よさを覚えました。



 たくさん伺ったお話のなかでも、もっとも印象的だったのは、桜の御神木の伝説。『その昔、四国から歩いて綱木にたどり着いた人が、杖に使っていた桜の枝を地面に刺すとそこに根付き、花が咲いた』という伝説が残されている、桜の大樹。40年前に、嵐で倒れてしまったその大木は、クマガイソウの群生する杉林のふもとに、現在も大きな根っこを残しています。その傍らには氏神様の祠と、震災前までは湧いていたという井戸のあとが。

そして、倒れた幹の一部は、遠野町入遠野の圓福寺(えんぷくじ)に寄進され、美しい護摩壇(下画像)に生まれ変わっていました。

 この、桜の御神木の伝説が、今回の川村さんの創作する影絵作品の軸になりました。
 3日目(3/18)の午後、川村さんは集会所に一人でこもり、物語のプロット(筋書き)を考えます。窓の外から、身じろぎせず集中している川村さんの後ろ姿を見つめながら、「今日は邪魔しないほうがいいんだっぺねー」と日向ぼっこしつつ待ちぼうけ。
(一緒に並んで待ちぼうけ)
 その2時間後。物語の骨組みが、いよいよ姿を現しました!

 4日目(3/19)からは人形の制作開始。


 川村さんはとにかく作業が早い! 登場人物をすらすらとスケッチされていたかと思うと、あっという間に10体のお人形ができていました! 綱木の皆さんおひとりずつのお人形も。
 最終日(3/20)の朝、そのお人形を見てもらいました。


「え? これ、おれ? おれこんなでねえ…… んー、でもやっぱり似てるか?」「いやぁ、よぐ似てる〜わはははは!」と大盛り上がり! 不思議なのですが、紙のお人形本体より、なぜか映した影の方が生命感があり、そして、モデルに似ているのです。


 片付けを終えると、私たちの受け入れを担当してくださった美智子さんが、畑で育てておられる自然薯ですいとんとお好み焼きを作り、ご馳走してくださいました。ほかほか、芯まであったまる〜!5月に出来上がった作品を、この地で上演させていただけるようお願いをして、私たちは綱木を後にしました。
 川村さんはその後東京に戻り、引き続き制作作業中です。綱木の伝説や、クマガイソウにまつわるいくつものエピソードからなるファンタジー。どんなお語に仕上がるかは、見てのお楽しみ… 子どもも大人も楽しめる作品です。野外での上演もわくわく、ドキドキ。ゴールデンウィーク最終日の5/6(日)は平中央公園で、作品の上演とともに、川村さんと美術家の藤浩志さんによるトークショーを合わせてお届けいたします。そして5/7(月)は、満開のクマガイソウ咲き誇る(であろう)綱木でのお披露目です。皆さまどうぞ暖かくしてお越しください。



■スキマチイワキmeeting vol.14「テッペンカケタカ〜綱木・クマガイソウの物語」(予約受付中)

5/6(日)18:00〜19:30影絵作品「テッペンカケタカ」上演&トーク
会場:平中央公園(いわきアリオス前)
※雨天・強風の場合は会場を「アートスタジオもりたかや」(いわき市平三町目3-4)に変更いたします。
影絵上演:川村亘平斎(影絵師・ガムラン奏者)
トーク出演:川村亘平斎、藤 浩志(美術家・秋田公立美術大学副学長/スキマチイワキ アドバイザー)
5/7(月)18:00〜18:45影絵作品「テッペンカケタカ」上演
会場:いわき市田人町石住字綱木地区(クマガイソウ園周辺)
影絵上演:川村亘平斎(影絵師・ガムラン奏者)
※夜間の上演となります。また綱木地区での道のりは細い山道ですので、十分に気をつけてお越しください。

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