【事業レポート】DULL-COLORED POP vol.18 福島三部作・第一部「1961年:夜に昇る太陽」関連企画 演出家トーク

2018.7.5

【事業データ】
〔日時〕2018年6月2日(土)18:00〜22:00
〔会場〕いわき芸術文化交流館アリオス 本館2階 カンティーネ
〔出演〕谷賢一(劇作家・演出家)
〔聞き手〕江尻浩二郎



文:ハギハラヒロキ(企画制作課 演劇・ダンス事業グループ チーフ)

 いよいよ公演間近、7/7(土)、8(日)DULL-COLORED POP vol.18 福島三部作・第一部「1961年:夜に昇る太陽」。いわきアリオス 小劇場での初演の1ヵ月前、6/2(土)に、作・演出の谷賢一による「演出家トーク」を開催しました。わたしが初めて谷さんにお会いしたのは2016年の12月。谷さんが第1回の福島取材を終えた直後でした。

※谷賢一さんの2年におよぶ福島取材については、こちらで詳しく振り返っています
【さきどりアリオス】福島三部作・第一部「1961年:夜に昇る太陽」福島取材の足取りを辿(たど)る

 福島の50年を演劇で描く「福島三部作」の構想や、それに対する2年以上をかけての準備や取材、そして、福島の方にこそ観ていただきたいという、谷さんの福島や演劇にかける想いを聞かせていただきました。
 それからいわきアリオスでの上演が決まり、しかも、東京公演に先駆けての、いわき初演が実現することになりました。その上で、福島の皆さまには、作品を観るだけでなく、ひとつの演劇ができるまでの過程や、そこに込める想いも知っていただきたいと、「演出家トーク」を実施しました。
 聞き手には福島やいわきのことをよく知っていて、演劇のことも語ることができる方が相応しいと、郷土史家の江尻浩二郎さんにお願いしました。江尻さんは地域に眠る郷土史を独自に調査し、小名浜地区を中心にまち歩きの企画等を手掛けています。また、東日本大震災以前は東京で演出家として演劇に携わっていました。

 谷さんと江尻さんによるトークは2時間に及びました。ここでは、その中から今回の作品について語られた部分の一部を抜粋し、ご紹介します。


※写真右が谷賢一さん、左が江尻浩二郎さん

江尻:この作品はいつ頃からやってみようと思ったんですか?

:福島を題材にしたものを書きたいというのは、2011年の震災直後からずっと考えていました。ちょっと口が悪くなりますけれど、2011年以降、東京でいくつか福島関係の演劇を観たんですよ。それが僕はどれも嫌いで。嫌いというか、僕は福島で生まれただけで、小学校からずっと千葉ですから、福島人を気取るつもりはないんですけど、なんか当時は福島がホットなトピックだからやっているっていう感じが、すごく嫌だったんです。取材期間とかもすごく短い、1ヵ月とかで書いて上演している、みたいなことにすごい抵抗があって。福島のことをなんとかしたいと思っても、とてもじゃないけど、1ヵ月とかで書けるもんじゃないだろうって。直感というか、予感みたいなことがまず真っ先にあったんですよね。

江尻:谷さんの取材の仕方、最初に決め打ちしないというか、この人のところに行こうみたいに決めないというのは、すごく共感できますね。

:最初はこんなの成立するのかって、すごく不安だったんですよね。だって、どこの馬の骨ともわからない奴が来て、急に話を聞かせてくれって言うんですから。僕が決めてたのは、人と会って喋るときに、自分から震災のときどうでしたかとか、原発についてどう思いますかって聞くのだけは絶対やめようと思ってたんです。それは初対面で聞く話じゃないな、と。ただ、不思議なことに、例えば、蕎麦屋のおばちゃんと喋っていると、僕が東京から来たと分かると、向こうから震災の話をしてくれるんですよね。その体験はすごく驚きました。地域によって、皆さん話すことも、感じていることも違うので、本当に多種多様な意見があって、しかも全員が語りたい言葉を胸の中にギュッと詰め込んで、普通の生活してんだなっていうことに、毎日毎夜、驚く日々でした。

江尻:やっぱり喋りたいっていうのはあるんですよね。わたしも色々な人に話を聞いていて思うのは、よその人に喋りたいっていうのがあるんですよね。

:そうなんですよね。東京から見てると、どうしても対岸の火事に見えてしまうけど、やっぱり今、現地で生きているってことが、報道にのらない言葉がこんなにあるっていうことに、ものすごく衝撃を受けました。



江尻:2年間の取材で見えてきた三部作の構想について聞かせていただけますか?

:私の母親は浪江町の出身で、その後に郡山市に引っ越して、石川町に落ち着いてみたいな感じでした。それで、父親は原発に出入りしていた時期があったんです。航空力学とか大学で勉強していたらしくて、空調関係の専門のエンジニアだったんです。原発は当然、空調だったり配管だったり、排気だったりとかが無数にあるので、それのメンテナンスとか、機械の納入みたいなことやっていた時期があったんですね。だから、私が小学生ぐらいのときって福島第一原発によく出入りしていたり、他の日本全国の原発に入って、こんな仕事をしてきたよみたいな話を、ものすごく普通の話として聞いていた時期があったんですね。父親は根っからの理系人間ですから、いかにその科学技術というのが素晴らしいもので、いかに自分の勤めている発電所の技術が優れているかをよく語っていました。
 そういう父親がいて、一方で浪江町出身の母親がいて、2011年の震災を機に、私の中で複雑な感じになったんです。別に夫婦喧嘩してたわけじゃないんですけど、父親も震災当時の話をしないですし、母親も浪江町のことについて、ほとんど話したくないようでした。父親はちっちゃい頃のわたしに科学が人を救うかみたいな話をしていただけあって、ものすごくショックな出来事だったろうと思うんですよね。今の福島第一原発の状況っていうのは、父親の信じていた科学とか人間の技術みたいなことが裏切られたということになるわけですから。そういうのが、もともと私の血筋のバックグラウンドにありました。
 今回は震災ではなく原発の話だと思っていますが、この震災を世界的に特殊な事例にしてしまったのは、やっぱり福島第一原発だったわけで、それを描こうと思っています。東京で原発とかの話になると、ものすごい感情的でヒステリックな反対論者の方が多いと感じています。私は段階的に脱原発していくべきだと思うし、できることならもうさっさと再生可能エネルギーみたいなところに、日本全体で舵を取るんだって早く決めて、今すぐ止められるなら、止めてもいいと思っているぐらいですが、でもそこを取り巻く経済だったり、人だったり仕事だったり、地域の共同体だったりっていうことの、複雑さっていうことが父親の事例もあって、知ってるんですよね。それで実際に私は小学校の頃、飯を食わしてもらってたわけですし、もし私が当時の双葉町に暮らしていたら、おそらく原発がないと、大学にも行かせてやれねぇ、という生活だったんじゃないかと思います。
 原発とか福島の問題を考えるにあたって、単純に原子力が良いとか悪いとかっていう話じゃなくて、社会の構造的なことを視野に入れた作品を作らなきゃいけないんじゃないかっていうことを、ずっと考えていました。

江尻:ひとつの作品ではなくて、三部作という構想は最初からあったんですか?

:取材に行く前から、これは1本じゃ無理だと思っていました。1本にまとめることができなくはないんでしょうけど、そうすると先ほども話した構造的なものが見えてこないと思います。というのは、例えば双葉町で原発に勤めていて、あるいは誘致してっていう人たちが、何を願っていたのかっていうと、やっぱり子どもと一緒に暮らしたいとか、孫に何か残したいとか、家族のことを考えてたと思うんです。2011年当時に、なんでうちの自治体に原発があるんだって思っている若者がいたと思いますけど、彼が作ったわけではなくて、彼のおじいちゃんが呼んだり、作ったりしたわけですよね。その彼とおじいちゃんの関係を書かないと、本当に複雑なこの問題は描き出せないんじゃないかっていうのが、最初の直感としてありました。

江尻:三世代の話なんですよね?

:3人の兄弟が、それぞれ第一部は長男が主人公で、第二部は次男、第三部は三男が主人公でみたいな感じの構想です。第一部では3歳だった三男が、2011年(第三部)のときには53歳になっていて、とある重要な仕事をしているっていう風に繋がっていきます。

江尻:最後に話しておきたいことはありますか?

:内容としては、複雑な原発立地自治体の葛藤を描いていますが、劇団の名前「DULL-COLORED POP(ダルカラード ポップ)」ってどういう意味かと言うと、POPっていうのは、楽しいとか、人気があるとか、面白いとか、そういう意味です。基本的に演劇って楽しくないといけないと思うし、面白くないといけないと思うし、勉強しにきているわけじゃないんだから、やっぱりエンターテイメントとして成立した上で、でも核心に触れるもの、あるいは劇場でしか味わえない体験だったり、演劇でし表現できないことをやらないと、演劇に対して失礼だと思うんです。
 だから今回も、その内容だけ聞くとものすごい社会派みたいな感じがしますし、実際そこは社会派であることから逃げないで書いていますが、青春劇としても楽しんでいただけると思います。青春劇として観た上で、1961年当時青春時代だった人たちが、一体何を思い何を考えたのかっていうことを一緒に想像するっていうことを、お客さんとできるといいなと思っています。
 アリオスで初日を開けます。普通は東京で初日を開けます。そっちの方がリスクは少ない。東京で上演したものを持ってくる方が、舞台の仕込みにしても、稽古にしても手間がかからないんですけど、これはやっぱり福島で初日を開けなきゃダメなんです。福島のお客さんが観て、ふざけるなっていうことだったら、私は何か考え方を変えなきゃいけないし、福島の人から観て面白かったけど、あそこは間違っているよって言われたら、それは訂正しなくちゃいけない。
 終演後に、トークディスカッションも用意されていますので、ぜひお芝居を観た感想というか、どう感じたのかっていうことを、劇場で聞かせてもらえれば、それを踏まえた上で東京公演をやって、東京のお客さんにも福島のことを考えてもらえたらいいなと思っています。



 2時間のトークのほんの一部ですが、今回の作品のこと、谷賢一さんのことを、少しでも知っていただければ嬉しいです。
 谷さんの言葉にもありますが、まずは福島の皆さまに観ていただきたい作品となっています。第二部、第三部と続く激動の歴史の始まりを、ぜひアリオスで体験してください。

【予約受付中!】
DULL-COLORED POP vol.18 福島三部作・第一部「1961年:夜に昇る太陽」
〔日時〕2018.7/7(土)18:30開演 8(日)14:00開演
〔会場〕いわきアリオス 本館4階 小劇場
〔料金〕全席指定 3,000円 高校生以下 1,000円
※未就学児入場不可
※当日券は各公演開演1時間前から販売

★以下2作品のお得なセット券もご用意しています。8/11(土・祝)、12(日)ナイロン100℃との2公演セット券 7,000円(一般のみ)
●結成25周年を迎えるナイロン100℃が、8年ぶりにアリオス登場!いわきアリオス開館10周年記念 ナイロン100℃ 25周年記念 46th SESSION「睾丸」

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