カニサレス・フラメンコ・クインテット特集 vol.2
関連企画・シネマ&トーク「フラメンコのルーツを探る」レポート

2018.8.8


「アリオスワールドミュージックコレクション」は、この地球に生きる様々な民族の音楽、芸術、歴史、生活文化を多角的に紹介してゆくアートイベントです。第8回となる今回は、外交関係樹立150周年を迎えるスペインから、現代最高峰のフラメンコ・ギタリスト=カニサレスが、自身のクインテットを率いて、いわきにやってきます。
7/28(金)の夜は、いわき市平字三町目のアートスペースもりたか屋さんをお借りし、関連企画として「シネマ&トーク フラメンコのルーツを探る」を開催しました。

上映した映画は、スペインを代表する映画監督、カルロス・サウラ監督の最新作「J:ビヨンド・フラメンコ」。フラメンコのルーツの1つとされるスペイン北東部の民族舞踊「ホタ(JOTA)」を題材にした映像美溢れる作品で、カニサレスさんも作品の1シーンを担っています。

トークは、スペインと日本を行き来しながらフラメンコの魅力を伝える活動をされている、坂倉まきこさん。長い歴史の中で様々な民族が往来し、それぞれの民族の文化芸術が混ざり合うなかで生まれ、現在も変化を続けるフラメンコの魅力について、珍しい映像や写真を交えながらお話いただきました。

今回のブログでは、映画の上映後の坂倉まきこさんのトーク再録(抜粋)をお届けいたします。

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トーク:坂倉まきこ(フラメンコ・コーディネーター)
編集:前田優子(いわきアリオス)


●フラメンコのルーツ
フラメンコのルーツは、正確なところはわかっておらず、諸説ありますが、「ヒターノ」(スペインでのロマの呼称)が関係している音楽であることは間違いないでしょう。北インドから来た音楽であることの証明になるようなエピソードがあります。
あるフラメンコのカンタオール(歌手)がインド・ラジャスタンの音楽フェスティバルで歌ったとき、インドの人たちに「同じメロディがラジャスタンにもある」と声をかけられたのだそうです。
(会場では、フラメンコとインド音楽のアーティストが共演したライブ音源を聴いていただきました)

イベリア半島は、ローマ帝国の台頭に始まり、西ゴート王国(ゲルマン民族)、北アフリカから侵入してきたイスラム系国家など、様々な民族の征服の応酬がありました。その歴史は国旗をみてもわかるように、スペインは実に様々な民族の入り混じる国なのです。ロマは、10世紀頃に北インドから西に向かって移動を開始し、ヨーロッパ各地でそれぞれの文化と結びついています。スペインには、1400年代の初めにロマが入ってきたという記録があるようです。
フラメンコも、そのままヒターノの音楽ということではなく、スペインにたどりついたロマとスペインの文化が出会い結びついてできた、スペインの音楽、文化です。


フラメンコは、スペイン南部のアンダルシア地方(=イスラムの影響が最後まで強く残っていた地域)で発生しました。
フラメンコの語源については諸説あり、放浪する民を表すアラブ語=Felah-Mengus(Flamencoに似た発音と思われる)からきているという説もあります。レコンキスタ(※)の流れで、ムスリムの排除、ロマの定住政策、キリスト教への改宗など、差別されてきた民族の嘆きの声が結びついて生まれたのではないか、ともいわれています。

※レコンキスタ(Reconquista):718年から1492年までに行われた、複数のキリスト教国家によるイベリア半島の再征服活動の総称。

●フラメンコの進化
「フラメンコ」=踊り、と思われるかもしれませんが、始まりは「歌」で、その後、ギター、踊りが加わっていきました。
もともとは仲間うちで集まった時や個人の家などで演奏されていましたが、1842年にフラメンコを楽しむことができるお店=カフェ・カンタンテができ、商業ベースに乗って発展していきました。20世紀後半には、カフェ・カンタンテから発展したタブラオ(フラメンコのショーを見ることのできるライブ・レストラン)が各地に出現し、たくさんのアーティストが活躍し、フラメンコは黄金期を迎えました。地元の人たちがフラメンコを楽しむ場としては、フラメンコ愛好家達が運営する「ペーニャ」という場もあります。


各地のタブラオでは、連夜2回の公演が行われています。

フラメンコが舞台作品として劇場にも場が展開されるようになると、さらに芸術的・前衛的な表現をするアーティストも出てきました。今回カニサレス・フラメンコ・クインテットに参加しているバイラオール(ダンサー)のアンヘル・ムニョスも、自身のカンパニーでの劇場公演や他のカンパニーの一員としてワールドツアーを行なっています。

●カニサレスのオリジナリティ
フラメンコは、基本は即興。細分化すると何十種類にもにおよぶ曲種を、耳で聴き、目で見て覚え、受け継がれてきた芸能です。
フラメンコに携わる人はヒターノだけには限りませんが、子どもの頃から身近にあり、自然に覚えられる環境のなかで、フラメンコのアーティストは育っていくため、ヒターノのファミリーで受け継いでいかれることが多いです。(もちろんそうでない人もいます)
カニサレスさんが他のギタリストと一味違うのは、幼少時からコンセルバトリオ(音楽学校)に入り、音楽を理論的にも学んだという経験によるところもあるでしょう。子どもの頃から身につけたフラメンコの伝統・基礎がベースにしっかりとありながら、コンセルバトリオで学んだ知識が加わったことで、カニサレスさんにしかできないフラメンコ音楽が生まれていると思います。独特の和音の使い方、音の広がり、奏でる音色には、聴く者に「あ、これはカニサレスだね」と分からせる「セジョ=印」があるのです。

また、フラメンコは、人となりが出る芸術と言えます。技術的に巧くても、それだけではフラメンコというものを感じて感動することはできません。今回来日するメンバーは、私もスペインでお会いした方ばかりですが、カニサレスさんはもちろん、来日するメンバー一人ひとりが、卓越した技術があるだけでなく、人間的にもとても魅力的で、家族的なあたたかみを感じられるグループだと思います。

(©AMANCIO GUILLEN)
いわきでのコンサート、たくさんの方にお越しいただきたいですね。

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