カニサレス・フラメンコ・クインテット特集 vol.3
公演担当・前田優子のスペイン旅行記:タブラオめぐり編

2018.8.27


文・写真:前田優子(企画制作課)

「アリオスワールドミュージックコレクション」は、この地球に生きる様々な民族の音楽、芸術、歴史、生活文化を多角的に紹介してゆくアートイベントです。第8回となる今回は、日本との外交関係樹立150周年を迎えるスペインから、現代最高峰のフラメンコ・ギタリスト=カニサレスが、自身のクインテットを率いて、いわきにやってきます。
企画担当の前田は、今年3月にフラメンコのふるさと、スペインを旅してきました(ちなみに私的旅行です!)。その旅行記を何回かに分けてお届けいたします。



スペインを訪れたのは初めて、そして現地ガイドさんもいない一人旅。首都マドリッド、そしてフラメンコの故郷である、スペイン南部・アンダルシア地方のセヴィリア、グラナダを、気の向くまま、朝から晩までてくてくと歩き回りました。
 私が滞在した期間はキリスト教の重要な宗教行事「セマナ・サンタ(聖週間)」にあたり、各地で信者さんたちのプロセシオン(行列)にいくつも遭遇しました。




行列の先頭で焚かれる香木の煙。美しく飾られたパソ(=キリストやマリアの像を乗せた御輿。何十人という屈強の男性たちが担いで行進します)の軋む音、三角の頭巾を被ったナザレノ(信者)たち、ブラスバンドの奏でる、力強くも悲哀をふくんだメロディ……
長い長いプロセシオンと、それを見守る何百人、何千人もの人々の祈りで、大通りが埋め尽くされていました。

眩しすぎるほどの青空の下を歩いているはずなのに、独特の陰影を感じる、不思議な街。とくにアンダルシアは、その歴史・文化の複雑さがそのまま風景にあらわれていて、一つひとつ驚きながら眺めているうちにあっという間に旅が終わってしまった、というのが正直な感想です。しかしこのカオスこそが、フラメンコだけでなくスペインのあらゆる芸術の源だということを肌で感じることができただけでも、旅した甲斐があったように思います。(フラメンコの歴史については、(リンク)→前回ブログ「シネマ&トーク「フラメンコのルーツを探る」レポート」で概説をご紹介していますので、お読みください)


滞在中、フラメンコのショーを行っているタブラオ(※)に通い、フラメンコを観てきました。今回の重要な目的のひとつです。
初めての(生の)フラメンコ体験!とても楽しかったのですが、実はショーの間ほとんどが撮影禁止で写真も少なく、ご紹介できないのが残念です、ごめんなさい。 街の写真などを含めつつ、ほんの少しだけレポートさせていただきます。
(注※:タブラオ=フラメンコのショーを観られるライブレストラン・バル)
まずはマドリッドの「コラル・デ・ラ・モレリア」。
優れたアーティストが揃う、マドリッドで最も有名なタブラオとのこと。9月の来日メンバーであるダンサー、アンヘル・ムニョスさんとチャロ・エスピーノさんも、出演アーティストのラインナップに名を連ねています(この日は出演されていませんでした)

スペイン王宮と大聖堂をのぞむ歴史地区にある、美しい佇まいの館。店内の雰囲気もスタッフの動きも、都会らしく洗練されていて、その緊張感が心地よく、ショーへの期待を高めてくれます。
照明が暗くなり、出演者全員が舞台に上がりました。短いオープニングのあと、3人のカンテ(歌)とギターの演奏に誘い込まれるように、踊り手が代わるがわる舞台に上がります。


ギターのソロを挟み、その後は畳み掛けるようにクライマックスへ向かってボルテージが上がっていきました。客席からもたくさんの声がかかり、一番後ろの席から観ていた私からは、エネルギーの渦が見えるようでした。

マドリッドから高速列車AVE(アヴェ)で南へ2時間半。フラメンコの最も盛んな地域・セヴィリアに到着。

(街角でも踊っている人に遭遇。)

セヴィリアでは2軒の老舗のタブラオに行きました。
国内の第一線で活躍するアーティストたちが出演しているという「ロス・ガジョス」。セマナ・サンタの人波を泳ぐように進んで、やっとたどり着きました。


こぢんまりとした空間で舞台とも近く、迫力満点でした。どんなに激しく踊っても体の軸がぶれないその姿にどこか静けさすら感じる、メインのバイラオール(男性ダンサー)の圧倒的な美しさと情感豊かな表現力に、ただただ、ため息。ギタリストも素晴らしく、今回観た中でのベストパフォーマンスでした。もう1軒の「エル・アレナル」は、やや若手のアーティストたちが出演していて、こちらもみずみずしいセッションが魅力的でした。

(エル・アレナル)

セヴィリアから高速バスで東へ3時間、グラナダに到着。
歴史地区に指定されている街並みから、アラブ人街の小路をぬけ、世界遺産のアルハンブラ宮殿をみながら、サクロモンテの丘を目指して坂をひたすら登っていきます。

山肌にはりつくように、白壁の門構えが並ぶ通りが忽然と現れました。

ここはヒターノ(スペインのロマ)たちの住んでいる洞窟住居群。その洞窟を利用したタブラオが、この日の会場でした。

バイレ(踊り)は女性メインで、楽器はギターだけでなくフルート、パーカッションなど多彩。掛け声とパルマ(手拍子)でにぎやかに互いを鼓舞し、笑顔もこぼれるパフォーマンスは、まさに人の絆を何より大切にするロマの家族的な雰囲気で、まるでホームパーティに招かれたような楽しさを感じました。


(ライトアップされたアルハンブラ宮殿)

ひとことで「フラメンコ」といっても、3つの地域でこんなに特色があるなんて。その土地のエネルギーとつながることでそれぞれに発展していった、ということなのでしょうか。さらにいろんな地域のフラメンコを、訪ね歩いてみたい! と思いました。
そして、「フラメンコは、人となりの現れる芸術」と、先日のシネマ&トークにご出演いただいた坂倉まきこさんがおっしゃっていました。それぞれの個性が活きる即興性の高いパフォーマンスは、二度と同じものを再現することができないものだろうと思います。
いわきアリオスのコンサートでは、どんな煌めきを感じることができるか、私自身も楽しみです。
(つづく)

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